「サイド・センター」で軸をより豊かに育てる【後編】(高岡英夫 談)
トップ・センターを学んでいる人は、遠慮なくサイド・センターも学んでいい
しかし一方、トップ・センターを学んでいる人は、遠慮なくサイド・センターも学んだらいい、ということです。それから次に、サイド・センターと同じ第2位グループの上・中・下丹田、リバース等々も一つのまとまりとして学ぶべきものなんだ、というふうに考えていただければいいでしょう。
また、今回お伝えしたい主旨とは直接的には関係ありませんが、ダイナミック・センターという専門講座がありますよね。あの講座で指導しているのは、じつはトップ・センターなのです。トップ・センターを静止的な側からのアプローチで学ぶものがいわゆるトップ・センターで、動的な側からのアプローチがダイナミック・センターなのです。
だからこの場合は、トップ・センターとダイナミック・センターのどちらが大事かということではなく、どちらもトップ・センターの講座なのです。そのように考えてみますと、ダイナミック・センターとサイド・センターの関係もよくおわかりいただけるでしょう。
次に2番目の疑問点について話をします。トップ・センターの習得がまだ途中なのにサイド・センターを学んでいいのだろうか、という疑問についてですが、次のような事実をお話しておくと、皆さんになるほどと思っていただけるのではないでしょうか。
まず身体意識のメカニズムが学問的に明らかになって、その明らかになった情報をもとにトレーニング法が考えられ、その方法に従ってトレーニングを行っている、という状況に皆さんはありますよね。
でもこのことは歴史上、口幅ったい言い方になりますが、私の仕事が皆さんに支持されて初めて、大きく言えば人類史上初めて実現できたことなのです。だからそもそも人類は、トップ・センターとサイド・センターの概念と構造・機能を理論上わかっていて、そのトレーニング法もわかっていて、それに沿ってトレーニングしてきたわけではないのです。それは現実の中で自然発生的に形成されてくる以外の何物でもないのです。
歴史上ほとんど100%に近い人々がセンター形成に成功してきた実体は、一体どうなっているのかといいますと、トップ・センターが完成して初めて、サイド・センターができ始めるという人は一人もいないのです。皆トップ・センターが途中なのに、サイド・センターも一緒に育ってくるのです。2つのセンターはお互い途中同士で補いながら伸びていくものなのです。
トップ・センターとサイド・センターは協調しながら育っていく
ですから、そのときにトップ・センターがまったくできていなくて、サイド・センターが育つという人は一人もいないのです。一方、トップ・センターが完璧なのにサイド・センターがゼロという人もいないのです。では「高岡英夫がDS分析したDS図が数多く発表されているけど、中にはサイド・センターが入っていない図もあるではないですか?」ということをおっしゃる方もいるかもしれませんが、それは私が描かなかっただけのことなのです。
いつも申し上げているように、全部はとても描き表せません。というのは、全部描き起こしていくと、一人の人物でたいへんな枚数になってしまうからです。いわんや発表する1枚というのは、情報の過多をさけるためも含め、私の方でかなりの部分を省略したものなのです。そのために、あのような結果になっているのです。
もう一度繰り返しますと、人間という動物が地球上で生まれ育っていくということは、トップ・センターとサイド・センターを協調させながら育っていくということなのです。そして、ここが人間の個性というものの面白さなのですが、トップ・センターの成長の仕方に比べサイド・センターの成長が遅れ気味の人や、トップ・センターの成長の割にはサイド・センターの成長が早い人など、じつに様々な上達の傾向があるのです。だからこそ人間というのは豊かで多様であるが故に、素晴しい存在なのです。
以上のことを知っていただくと、正しい身体意識のメカニズムの理論を理解しながら、またそこから生まれたトレーニング法を学んでいただく皆さんにとっても、トップ・センターが完成しなくては、サイド・センターを学んではいけない、という話ではそもそもないということを、ご理解願えるのではないでしょうか。
コンセプトの違いを出した方が楽しいし、それは必ず学習力に繋がる
私はサイド・センターのトレーニング法について、何通りも研究、開発しているのですが、トップ・センターについてもそれはまったく同じです。トップ・センターの講座で私の指導を受ける方は、重要ないくつかのメソッドを学ばれます。しかし、あれらはトップ・センターを鍛える数多くあるメソッドのうちの選ばれた一部なのです。私が厳選した一部なのです。また、メソッドを厳選する過程には、厳選の仕方、選び方のコンセプトというものがあります。
サイド・センターの例でいうと、トップ・センターで厳選したときのコンセプトとコンセプト自体を変えた方が、学んでいて新鮮ですし、またずっと興味が深まり身にも付くのです。皆さんもサイド・センターでは、トップ・センターとまったくガラッと異なるコンセプトで選んだメソッドを学ぶ方が断然興味がわきますよね。そのようにトップ・センターとは相当印象の違うメソッド群で、サイド・センターの講座は構成されているのです。
人というのは、やはり同じようなコンセプトが続くと面白くないのです。人は飽きっぽい生き物だからだ、ということを言うつもりはさらさらないのですが、フランス料理でもイタリア料理でも、コース料理全てが魚だったら皆さんはどのように感じますか? 「魚以外は食べられません、肉はダメです」という人は別でしょうが。でもたとえそういう人がいらっしゃったとしてもずーっとサンマだったら、さすがに嫌になってしまいますよね。私が伝えたかったのは、まさにそういうことなのです。
だからここでは、人は飽きっぽいということの根拠を示したいのではなく、学び方の新鮮さ、コンセプトの違いというものを出された方が、人は楽しいし、それは必ず学習力に繋がるということを申し上げたかったのです。
さまざまなコンセプトを学ぶこと、体験することに大事な意味がある
それともう1つ。身体意識の世界はたいへん広くて深いのですが、その広さ深さはじつに厖大なものです。ですから、それらをトレーニングして学んでいくメソッドも厖大な数が存在することになりますし、今後も研究を重ねればさらにその数は増すでしょう。そして、それらのトレーニングメソッドには、じつにさまざまなコンセプトがあるわけですし、あるはずなのです。
とすると、人の一生のうちで身体意識のトレーニング法のすべてを学んで、身につけるということは到底不可能な話になります。その前提でいえば、トレーニングメソッドもただ一方向的に整理するだけでなく、人間の本質に適ったゆるんだ発想で学んでいきたいですよね。もし、それを方向を示す言葉でいうと、南向きのコンセプトもいいし、正反対に北風に向かっていくような北向きのコンセプトもいい。南向きでいい加減に暑くて汗ばっかりかいているときには、北向きが待ってましたというほど快適なわけです。
このことは、味にたとえたときも同様です。饅頭を食べてて美味しいけど、3個目になると「いやー、なんか塩辛いものが欲しいな」という欲求が出てきますよね。そこで、たくわんを食べてみたら無性に美味しいということが当然ありうるわけです。
ですから各々の講座で指導させていただくメソッドのコンセプトも、あえて変えているのです。そして、それをまた皆さんが学ぶこと、体験すること自体にも、非常に大事な意味があるのです。トップ・センターとはまったく違う発想から攻めていく、このアプローチをぜひ楽しんでいただければと、思います。
<了>
2010年4月3日(土)13:30~18:00
さたでい身体シリーズ『サイド・センター 初級』
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ファクス 03-3817-7724
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