ホーム > ゆる体操関連論文紹介 > 全身をくまなくユルユルにときほぐす「ゆる体操」~快適・安全・楽チンなお産のために~
出典:母と子の健康教育-妊産婦の保健相談・子育て支援- より
(中林正雄・安達知子監修、ライフ・サイエンス・センター刊、2005年)
薬剤と機械の介入による「産まされるお産」ではなく、産婦自身の主体性を尊ぶ「産むお産」を選択する努力が、問題意識の高い医師,助産師、運動療法家等によって積み重ねられて来ている。ヨガ、筋トレ、ストレッチ、呼吸法等による妊産婦の身体運動能力の改善、出産時の姿勢と運動環境の改善からスタートした努力は、産婦の感性に任せる自然的な出産の試みにまで到っている。
こうした努力の過程では当然評価されるべき多くの成果が見出されるとともに、さらに改善されるべき問題点も少なからず見出されることとなった。具体的には、きつく、面白くなく、訓練的な運動法が、妊婦に新たな精神的・身体的負担を掛ける結果になったり、筋力強化や筋収縮系因子の強い方法が個性によっては骨盤関連筋郡の緩解能力を下げる結果、かえって難産を助長する因子として作用したり、出産時姿勢・環境の工夫が妊産婦の個性とマッッチングしなかったり、現代女性の基本的身体能力の低下が自然的な出産遂行の障害となったり等である。
産婦自身の感性に任せる自然的な出産の結果、安全で、快適、楽チンな出産を実現できるとすれば、それこそが最良の選択肢であることは、女性と生まれようとする子に対するヒューマニズムの、当然過ぎるほど当然な帰結である。
現代女性の基本的身体能力の低下という、言わば女性自体の側にある問題のために、このナチュラルでヒューマニズム溢れる方法が実を結ぶことができないとしたら、悲しむべきと同時にこれほど本質的で深刻な事態もないと考える。早急に効果的な方法を考案する等の対策が図られる必要がある。
ゆる体操は、基本的身体能力の低下にさいなまれる現代人、中でも身体を動かすことが大嫌いという体操嫌い、余計なことは一切やりたくないという怠け者、とにかく超楽チンで即座に素晴らしい効果が感じられないと嫌だという贅沢者、学習能力も気力も体力も衰えきった高齢者、身体を動かすこと自体に制限のある妊産婦や障害者や病人、楽しく愉快に面白おかしく身体を動かすことなら大歓迎という老若男女から子供・幼児までをターゲットに開発した、これまでの運動法とは一線を隔する全く新しい思想の運動法である。
それでいてゆる体操は、大人から子供、プロからアマ、オリンピック選手からJリーガーに到るあらゆる階層・種目のスポーツ選手の能力向上や障害防止や疲労回復にも、有効な方法であることが実証されている。
こうした極めて多彩に思える要求に対し、ゆる体操が充分な回答を与えることができたのには、実に明快な二つの要件が存在した。その一つが、心身両面から人が緩み、解きほぐれるためのあらゆる工夫を盛り込んだことであり、他の一つが全ての運動方法を最低のコストで最大のリターンが得られるよう組み立てたことである。
体幹内を中心に手足までの全身を隈なく緩ませ、解きほぐすことで、特に困難とされる体幹の深層筋・呼吸筋・骨盤底筋と骨盤骨・脊椎・肋骨を自在に操作、コントロールするという基本的身体能力が自然に開発され、そうして開発された基本的能力が、例えば、出産とスポーツという一見全く共通性のない領域で、より安全で優れたパフォーマンス向上に役立つことが分かってきたのである。
ゆる体操は、地方行政の健康長寿計画に取り入れられ大きな成果を上げている。都市部では、TVや雑誌、書籍を通じて若いОLから中高年の主婦の間で、精神身体全般の健康法、疲労回復法、辛さの少ない割りに効果の高いダイエット法として、支持を得ている。
また、最近では、生理の血を膣内にプールしトイレで排泄する「月経血コントロール法」の専門的なトレーニング法としても、利用が進められている。
そしてさらに妊娠期間の効果的な運動法として、出産時の安全で、快適で、超楽チンなパフォーマンス実現のために、取り入れる試みも、赤十字産院や各地の助産院など各所で行われている。以下に、最近の試みの事例を二件、簡単に報告しておく。
事例1:S.Y.さん(鍼灸師、27歳、初産)
・平成16年1月~4月
「大和撫子のからだづくり教室」(女性専用の「ゆる体操」クラス)(月3回・70分/回×12回)受講。妊娠6ヶ月、5月上旬の出産予定の時から出産4日前まで、他の受講生と同じように受講した。
・平成16年3月頃
担当講師(運動科学総合研究所主任研究員 Nidoさん)に「出張助産師さんにお願いし、自宅で産むことに決めました。」と報告した。
岡山県三宅医院の三宅先生に妊婦のゆる体操についてご相談したところ、「ゆる体操は素晴らしい効果のある体操なので、妊婦さんにすすめてください。何かご質問があればあれば直接、三宅に聞いてください。」とご回答を頂きました。
平成16年4月27日午前3時25分・初産で男の子を出産。
いよいよ陣痛が始まり助産師さんに連絡をしたところ、陣痛の頻度がだんだんと出産間近の状態に近づいてきた。
この調子ならもしかして・・・と、自宅出産の準備を始めたところ、助産師さんの到着前に、陣痛からわずか一時間で出産した。主人と二人で赤ちゃんを取り上げた、大変楽しい出産だった。
「ゆる体操」の一つに「フワーッ」と言いながら行う「下腹フワ腰フワ体操」という体操がありますが、お腹が痛くなった時に「フワーッ」とつぶやきながら体幹部をゆるめるように心がけていました。
体の意識を高めるために、「ゆる体操」では「気持ちよく」と発声しながら体をさする「さすり技法」が重視されますが、普段から運動科学総合研究所の「ゆる体操教室」を受講している主人が「気持ちよく」と言いながら、度々さすってくれていた事や、出産前日と出産中に、仙骨のあたりと下腿をさすってくれたのが、体をゆるめるのに、すごく効いたと思います。
事例2:O.S.さん(国立医療センター職員、32歳、初産)
平成15年9~10月「体幹内コントロールのための体操」教室にて「ゆる体操」を5回受講
自宅ではCD「やまとなでしこのからだづくり」を聞きながら、一週間に3・4回、ほぼ一日おきに「ゆる体操」を行った。
平成16年4月11日午前2時47分・陣痛から3時間で男の子を出産。
東京都豊島区にある助産院「目白バースハウス」で陣痛が始まってから約3時間で出産しました。
自分の体に意識を傾けて、楽だと思える自由な体勢をとりながら出産しました。陣痛が始まってからは、「ゆる体操」でやっているように、無駄な力をなるべく抜くように心がけました。床に体育座りのように座った状態なら赤ちゃんが出てきそうな気がしたので体勢を変えて、背中をご主人に支えてもらった状態で出産した。
「ゆる体操」で自分の体へ意識を高める事に慣れていた事が、出産の時にも役だったと思いました。
特に「息ゆる」の効果なのでしょうか、胴体の中のコントロールがとても簡単にできたのには、夫も感心していました。
出産後、当日の15時には自宅に帰る事ができたので、産後の体の回復にも「ゆる体操」は有効だと思いました。
何れの体操も体調に応じて、特にソフトにデリケートに行って下さい。